そろばんは、長く日本の学びを支えてきた伝統的な教育道具だ。一方で、社会は大きく変化している。だからこそ、いしど式は考える。伝統を守るために、何を変えるべきか。いしど式のDXは、単なる効率化ではない。そろばん教育の価値を、より多くの人に、より深く届けるための挑戦である。
テクノロジーは、先生の代わりではない

教育にテクノロジーを取り入れると聞くと、「先生の仕事が機械に置き換わるのではないか」と感じる人もいるかもしれない。しかし、いしど式が目指しているのは、その逆だ。テクノロジーの力によって、先生が子ども一人ひとりに向き合う時間を増やす。子どものつまずきや得意なことを、より正確に把握する。次に何を学ぶべきかを見極め、よりきめ細かな指導につなげる。
いしど式の教育の特徴は、個別対応にある。だからこそ、テクノロジーは教育の温度を下げるものではない。むしろ、先生が子どもを深く理解し、より丁寧に関わるための道具になる。先生が本当に時間を使うべきなのは、事務作業ではなく、子どもたちの表情を見て、声を聞き、成長を支えること。その時間を増やすために、いしど式はDXを進めている。
原点は、2000年の「インターネットそろばん学校」

いしど式のテクノロジーへの挑戦は、近年急に始まったものではない。大きな転換点となったのは、2000年にリリースされた「インターネットそろばん学校」だった。そろばんというアナログな教育に、インターネットを掛け合わせる。当時としては、大きな挑戦だった。
背景にあったのは、「この素晴らしいそろばん教育を、もっと多くの人に届けたい」という想いだった。近くに教室がない子どもにも。海外に住んでいる人にも。さまざまな事情で教室に通えない人にも。インターネットを使えば、場所を越えてそろばんを学べるのではないか。その発想が、いしど式のDXの出発点になった。
紙からタブレットへ。不安を越えて見えた可能性

現在、いしど式では紙の学習教材からタブレット教材への移行も進めている。もちろん、最初からすべてがスムーズだったわけではない。「タブレットでそろばんを学ぶことに、本当に意味があるのか」「紙の教材の方がよいのではないか」——新しいものが導入されるとき、不安や反発が生まれるのは自然なことだ。
しかし、実際にタブレットを使って学ぶ子どもたちが、これまで以上に楽しく学び、成果を出していく。その実績が見えてくると、不安は少しずつ期待へと変わっていく。大切なのは、テクノロジーを使うこと自体ではない。子どもたちにとって、学びやすくなるか。先生にとって、指導しやすくなるか。いしど式が見ているのは、常に現場で起きている変化だ。
開発でこだわるのは、誰でも直感的に使えること

教育現場で使うシステムに求められるものは、単に機能が多いことではない。先生が使いやすいこと。子どもが迷わず使えること。保護者にも伝わりやすいこと。いしど式の先生たちは、年齢も経験も幅広い。だからこそ、説明書を読まなくても直感的に使えることを大切にしている。
そのため、いしど式では最初に完璧な設計図を描いて一気に開発するのではなく、現場で試しながら改善を重ねている。実際に生徒が使ってみて、どう感じるのか。先生が使ってみて、何が負担になるのか。トライアンドエラーを繰り返しながら、現場に合った形へと磨いていく。このアジャイルな開発姿勢も、いしど式のDXの特徴である。
オンラインだから届けられた学び

いしど式では、オンライン学習も大きく広がっている。地域に教室がない。海外に住んでいる。家庭の事情で通学が難しい。そうした理由でそろばんを学ぶ機会がなかった人にも、オンラインであれば学びを届けることができる。現在では、海外30カ国を超える人たちがオンラインでそろばんを学んでいる。
画面越しの指導には、対面とは違う難しさもある。しかし、オンラインにはオンラインならではの良さもある。先生と子どもだけではなく、近くにいる保護者や家族も一緒に学びを支えることができる。画面の向こう側で、先生・生徒・保護者の三者が協力しながら、対面では足りない部分を補っていく。オンラインは、単に教室を画面に置き換えたものではない。新しい学びの関係を生み出す場でもある。
生徒管理システムが変えた、先生と保護者の関係

テクノロジーの導入は、学習そのものだけでなく、教室運営にも変化をもたらしている。以前、先生の仕事には多くの事務作業があった。出席簿を作る。出欠を管理する。成績や検定の情報を整理する。こうした作業は、先生の時間を大きく使っていた。生徒管理システムの導入によって、それらの作業がボタン一つで整理できるようになった。その結果、先生が生徒に向き合う時間が増えた。
また、保護者とのコミュニケーションも変わった。以前は電話が中心だった連絡も、アプリを通じてメッセージを送り合えるようになった。教育は、先生だけで完結するものではない。子ども、先生、保護者がつながることで、より良い学びの環境が生まれる。生徒管理システムは、そのつながりを支える基盤にもなっている。
働き方の多様性も広げていく

オンライン化やシステム化は、子どもたちの学びだけでなく、先生たちの働き方にも変化をもたらしている。海外の生徒に向けたオンライン授業が広がることで、これまで教室が開いていなかった午前中の時間に、在宅で授業を行う先生も増えてきた。
家庭の事情やライフステージに合わせて働く。自宅から海外の生徒とつながる。必要な時間に、自分の力を活かす。テクノロジーは、教育を届ける場所を広げるだけでなく、先生たちが働き続ける選択肢も広げている。いしど式が大切にしているのは、人が長く活躍できる環境をつくること。そのためにも、DXは重要な役割を担っている。
伝統とテクノロジーで、学びをもっと楽しくする

本来、学ぶことは楽しいことだ。知らなかったことを知る。できなかったことができるようになる。自分の可能性が広がっていく。そろばん教育が育ててきたのは、その喜びである。テクノロジーの力を使えば、その楽しさをもっと高めることができる。一人ひとりに合った学習を届ける。成長を見える化する。先生と保護者が連携しやすくなる。世界中の人が同じ教育につながる。
いしど式が目指しているのは、古いものを新しいものに置き換えることではない。本当に大切な価値を守るために、届け方を進化させることだ。
次の一手は、世界に広がるそろばん教育のインフラへ

教室で学ぶ子どもたち。オンラインで海外から学ぶ生徒。現場で指導する先生。家庭で子どもを支える保護者。そして、世界各地でそろばん教育を広げたいと願う仲間たち。そのすべてをつなぐ教育インフラをつくっていくことが、次の挑戦になる。
いしど式のDXは、単なるデジタル化ではない。人と人がより深く関わるための挑戦であり、子どもたちの可能性をもっと広げるための挑戦である。伝統を守るために、変わり続ける。それが、いしど式の「そろばん×テクノロジー」の挑戦だ。
※本記事は、株式会社イシド 代表取締役社長・沼田紀代美氏への取材・インタビュー内容をもとに、採用サイト向けに再構成したものです。
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